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我が運命は君の手にあり
第12章 第十二性
益田の携帯が鳴った。
「あぁ、早速お家元からだ。……はい益田です。……はい、えぇ、今戻るところなんですが、道が混んでて時間がかかりそうなので、申し訳ないんですが咲さんをお願いできませんか? たぶんお腹が空いてると思うんです。社長には僕から連絡しておきますので、……はい、そうですね……、わかりました。では最終日に」
電話を切った益田は、目を閉じてシートにどっともたれ込んだ。
「咲さん……」
口をついて出た名前が、ため息とともに消えていった。力なく笑う横顔に、四十男の哀愁が漂っている。
ふと目が合った。
「秋津さん、なんなら僕がめちゃめちゃにしてあげましょうか」
不自然な笑いに強がりが見える。
「ふっ、冗談ですよ。……行きましょう」
事務局に着くまで二人は無言だった。冴子は咲の無邪気な顔を頭に描き、頬笑む遼を隣に添わせた。咲の一途さが、きっと遼の心を捉えるだろう。
もう嫉妬心は湧かなかった。自然と笑みが溢れた。
「守沢さんとの約束は嘘です。あなたと二人きりになりたかっただけなんです」
事務局の前で車を降りた益田は、助手席のドアを開けた。冴子が車を降りると、益田は「ちょっと待って」と後ろのドアを開け、二枚の写真を取り出した。彼はそれを台紙に挟んで冴子に手渡した。
「あぁ、早速お家元からだ。……はい益田です。……はい、えぇ、今戻るところなんですが、道が混んでて時間がかかりそうなので、申し訳ないんですが咲さんをお願いできませんか? たぶんお腹が空いてると思うんです。社長には僕から連絡しておきますので、……はい、そうですね……、わかりました。では最終日に」
電話を切った益田は、目を閉じてシートにどっともたれ込んだ。
「咲さん……」
口をついて出た名前が、ため息とともに消えていった。力なく笑う横顔に、四十男の哀愁が漂っている。
ふと目が合った。
「秋津さん、なんなら僕がめちゃめちゃにしてあげましょうか」
不自然な笑いに強がりが見える。
「ふっ、冗談ですよ。……行きましょう」
事務局に着くまで二人は無言だった。冴子は咲の無邪気な顔を頭に描き、頬笑む遼を隣に添わせた。咲の一途さが、きっと遼の心を捉えるだろう。
もう嫉妬心は湧かなかった。自然と笑みが溢れた。
「守沢さんとの約束は嘘です。あなたと二人きりになりたかっただけなんです」
事務局の前で車を降りた益田は、助手席のドアを開けた。冴子が車を降りると、益田は「ちょっと待って」と後ろのドアを開け、二枚の写真を取り出した。彼はそれを台紙に挟んで冴子に手渡した。