この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
遼はぽかんとした顔で本城を見た。
「はぁ?」
「ですから、秋津さんが退職するそうです。あまりに急なことで守沢さんも驚いてましたよ。お婆様の体調が悪いのなら、有給休暇を利用するとか、ほかの方法を一緒に考えましょう、って言ったそうなんですけど、意思は固いらしくて説得できなかったと……」
本城の話は、途中から耳に入ってこなかった。冴子はなぜ勝手な真似をしたのか。なぜひと言の相談もないのか。いつから辞める事を考えていたのか。
「なんで……」
冴子の様子を振り返っても、そんな素振りは微塵も感じられなかった。年寄りは急に体調を崩すから、彼女にとっても急なことだったのか。遼の視線は会場の外を向いて泳ぎ、笑顔で近付いて来た咲と益田に気づかなかった。
「遼さん、お疲れ様でした。これ、お父様が遼さんに渡すようにって」
本城が彼の背中をそっと叩いた。
「お家元……」
「えっ、あぁ、咲ちゃん、ありがとう」
のし袋でも入っているのだろう。遼はその厚みのある茶封筒を横にいる本城に手渡した。咲の丸い目が、不思議そうに遼を見つめた。
「はぁ?」
「ですから、秋津さんが退職するそうです。あまりに急なことで守沢さんも驚いてましたよ。お婆様の体調が悪いのなら、有給休暇を利用するとか、ほかの方法を一緒に考えましょう、って言ったそうなんですけど、意思は固いらしくて説得できなかったと……」
本城の話は、途中から耳に入ってこなかった。冴子はなぜ勝手な真似をしたのか。なぜひと言の相談もないのか。いつから辞める事を考えていたのか。
「なんで……」
冴子の様子を振り返っても、そんな素振りは微塵も感じられなかった。年寄りは急に体調を崩すから、彼女にとっても急なことだったのか。遼の視線は会場の外を向いて泳ぎ、笑顔で近付いて来た咲と益田に気づかなかった。
「遼さん、お疲れ様でした。これ、お父様が遼さんに渡すようにって」
本城が彼の背中をそっと叩いた。
「お家元……」
「えっ、あぁ、咲ちゃん、ありがとう」
のし袋でも入っているのだろう。遼はその厚みのある茶封筒を横にいる本城に手渡した。咲の丸い目が、不思議そうに遼を見つめた。