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我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
遼はぽかんとした顔で本城を見た。

「はぁ?」

「ですから、秋津さんが退職するそうです。あまりに急なことで守沢さんも驚いてましたよ。お婆様の体調が悪いのなら、有給休暇を利用するとか、ほかの方法を一緒に考えましょう、って言ったそうなんですけど、意思は固いらしくて説得できなかったと……」

本城の話は、途中から耳に入ってこなかった。冴子はなぜ勝手な真似をしたのか。なぜひと言の相談もないのか。いつから辞める事を考えていたのか。

「なんで……」

冴子の様子を振り返っても、そんな素振りは微塵も感じられなかった。年寄りは急に体調を崩すから、彼女にとっても急なことだったのか。遼の視線は会場の外を向いて泳ぎ、笑顔で近付いて来た咲と益田に気づかなかった。

「遼さん、お疲れ様でした。これ、お父様が遼さんに渡すようにって」

本城が彼の背中をそっと叩いた。

「お家元……」

「えっ、あぁ、咲ちゃん、ありがとう」

のし袋でも入っているのだろう。遼はその厚みのある茶封筒を横にいる本城に手渡した。咲の丸い目が、不思議そうに遼を見つめた。

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