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我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
退職まではまだ日がある筈だ。もう次の仕事の目処は立っているのか。まだならどこか紹介してやってもいい。マンションの部屋をひとつ借りてやれば、今よりずっと安心して暮らせるだろう。もっと早くそこに気付くべきだった。
彼は反省しながらも、冴子の生活を守る計画を練り始めた。



夏の日は長く、エントランス前の噴水はまだ色を変えない。駐車場に車を止めた彼は、規則的に並んだ窓を見上げ、冴子に電話をかけた。呼び出し音を七つ数えたところで携帯をしまい、足早に建物に入っていった。

無人の受付で戸惑っていると、後ろから声が掛かった。

「すみません、今日は受付の者が早く帰ってしまいまして、……ご面会の方ですか?」

エプロン姿の中年の女性が近づいてきた。胸の名札に小山と書かれている。

「あ、はい。秋津さんの……」

「秋津さん?……あのう、失礼ですが秋津さんとはどういうご関係で……」

小山の疑問は当然だった。

「失礼しました。実は秋津さんのお孫さん、冴子さんの職場の者ですが」

遼は急いで名刺を差し出した。

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