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我が運命は君の手にあり
第1章 第一章
華道界では未だ末端の位置にある染井流。その三代目家元を襲名してから三年、遼はようやく周囲から認められつつあった。身勝手で奔放な父の後を継いだのは三十代の始め。嫁いだ姉を頼りには出来ず、手探りで邁進してきた彼を、時江は静かに見守ってきた。役に徹し、決して私事を持ち込まない彼女に、彼は家内の全てを任せていた。

一階に下りた遼は、広い縁側に出て暮れかかる空を見上げた。雲が濃くなり始めたせいで、今夜の月明かりは拝めそうにない。仕方なく腰をおろし、やめていた煙草に火を付けた。

──あなたは私を許したりしない

紫煙を燻らせ、封筒の美しい文字に目を落とすと、不意に秋刀魚を焼く匂いが鼻孔を擽った。父の好物だった秋の味覚が、今宵の食卓に並ぶのは偶然か。

「あんたの望み通りになるよ」

不味い煙草を揉み消しライターに火を灯した。炎と煙が揺れ、封筒の端がちりちりと燃え始めた。


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