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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
「失礼します」
時江が顔を近付け、紅筆に取った赤を冴子の唇にのせていく。その表情が妙に艶かしく、冴子はそっと視線を外して鏡を見た。奇妙な感覚に陥った。
「化粧は女性の嗜みですよ。せっかくの白い肌に頬紅も差さないなんて」
時江はそうこぼして紅筆を置いた。更に眉も整えようと冴子の顎を少し上向かせた時、冴子の目からつと涙が溢れた。
「な、なんで……」
まさかの事態に自分が驚いた。
「これを」
冴子は渡された箱からティッシュを抜き取り、すみませんと言って目頭を押さえた。だが意思に反して涙はあとからあとから頬を伝ってくる。
抱擁されて初めて、冷えきっていた自分を自覚したような、切ない安堵感が冴子の心に隙を与えていた。
着物を着せてもらい、髪を結ってもらう。紅をさしてもらい、化粧をしろと叱られる。恥ずかしさと戸惑いが、慣れない嬉しさとなって冴子を温めた。
「ほら、しゃんとして」
「……はい」
時江が顔を近付け、紅筆に取った赤を冴子の唇にのせていく。その表情が妙に艶かしく、冴子はそっと視線を外して鏡を見た。奇妙な感覚に陥った。
「化粧は女性の嗜みですよ。せっかくの白い肌に頬紅も差さないなんて」
時江はそうこぼして紅筆を置いた。更に眉も整えようと冴子の顎を少し上向かせた時、冴子の目からつと涙が溢れた。
「な、なんで……」
まさかの事態に自分が驚いた。
「これを」
冴子は渡された箱からティッシュを抜き取り、すみませんと言って目頭を押さえた。だが意思に反して涙はあとからあとから頬を伝ってくる。
抱擁されて初めて、冷えきっていた自分を自覚したような、切ない安堵感が冴子の心に隙を与えていた。
着物を着せてもらい、髪を結ってもらう。紅をさしてもらい、化粧をしろと叱られる。恥ずかしさと戸惑いが、慣れない嬉しさとなって冴子を温めた。
「ほら、しゃんとして」
「……はい」