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我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
ふと気付くと、肩を擦る信子が横にいた。窓の向こうはすでに暗くなっていて、手にしていた筈の湯飲みが足元に転がっている。彼は現実に戻された。

「どうしたの真吾、疲れたのかい? 冷蔵庫に冷たいお茶が入ってるよ」

「……すみません、俺もう行きます」

「また仕事かい? 大変だねぇ。早く帰っておいで、さえちゃんが待ってるからね」

彼女は忘れているらしい。真実と虚構を判別する必要はなく、全てを受け入れてその中にいる。無邪気に語った残酷な真実は、とうに忘れて優雅に微笑む。
ふらりと立ち上がった拍子に椅子が倒れた。

「真吾、大丈夫かい?」

遼は無言で椅子を戻し、部屋を出た。小山が何か話し掛けてきたが、会釈する余裕もなくエレベーターに飛び乗った。

車に戻った彼は、息を整えて冴子に電話を掛けた。
聞きたい事がある、と優しく言おう。会って話せば疑問が解ける。
変に誤解されるのが嫌で黙っていました。手作りの花器を見て、興味があったので教えてもらいました――きっとそういう筈だ。

「……」

呼び出し音は息苦しさを増すだけだった。彼は暫くハンドルを睨み付け、再び電話を掛けた。

「あ、時江さん? 親父いるかな」

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