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我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
駅を横目に住宅地をゆく車は、家路に向かう人々を追い抜いて走る。アパートの駐車場から見た冴子の部屋は暗かったが、遼は鍵を抜かずに車を降りた。階段を駆け上がり、チャイムを鳴らし、ドアを叩いたが返答はない。

『くそっ!』

静かな着信音に気付き、慌てて携帯電話を取り出した。画面に“益田゛の文字を見た彼は、ため息をついて通話を拒否した。

行く先はひとつしかない。運転免許を取って以来、近くを通っても立ち寄らなかった父の工房。自然に囲まれ、夏には姉と二人、虫を取って遊んだ場所。いつしかそこを避けるようになったのは、成長し、興味が外へ向かった為でもあったが、父の邪魔をしたくない思いもあった。
土を捏ねる父の目は普段と違って穏やかで、だからそこは、仕事を離れた父だけの聖域に思えた。だが、彼自身が染井流に関わるようになり、父の醜聞を知ってからは見る目が変わった。幼い頃から、何と無しに心に懸かっていた小さな不思議が、次々に正体を見せた。それまで抱いていた尊敬は軽蔑に、更に染井家の恥、汚点とさえ思うようになった。

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