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我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
暗闇の中、ヘッドライトが黒い車を照らし出した。この場所に不似合いな程磨きあげられた車は、当然遼の父親のものだ。彼は少し距離を取って停車させ、ドアを開いて砂利を踏んだ。

緑に囲まれているせいで街中よりも気温が低い。辺りを見渡した遼は、薄明かりを目指して歩いた。その明かりが、父の寝泊まりする部屋のものだと察した彼は、胸に溜まってくる嫌な空気を吐き出した。
もっと広々として、走り回れた筈の土地が、こうして歩くと、工房までの距離がやけに近い。足下に砂利の音を重ねるうち、鼓動は強く重くなり、指先は冷たくなった。

昔より小さくなった工房に人の気配はなく、古くなったドアには鍵が掛かっている。彼には、幼い記憶を懐かしむ余裕はなかった。

隣の家の電灯に蛾が飛び交っている。その扉を叩こうとしてふと、障子の窓から漏れている明かりに目がいった。以前から立て付けが悪く、障子を閉めても隙間ができる。姉と二人、その隙間に指を差し込んで遊んだ記憶が蘇った。


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