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我が運命は君の手にあり
第13章 第十三章
午前0時になろうとしていた。

「あぁ、もうこんな時間か。ごめん、顔も出せなくて」

「お仕事なんだから仕方ないですよ。お父様もいつもそう。あ、ちょっと待ってくださいね、益田さんに代わります」

「お家元、今夜の埋め合わせに、咲さんを食事に誘ってあげてください。それぐらい当然ですよね、約束してください」

「ええっ?」と驚く咲の声に、遼は微笑んだ。

「もちろんです。約束します」

「この約束は必ず守ってください。あ、迎えのタクシーが来たので、僕はここで咲さんを見送ります、待ってますよ」

携帯を閉じた途端、また怒りが湧いてきた。

――裏切りますから、人は

冴子の生い立ちを知った時、その言葉の意味にたどり着き不憫に思った。

――あるいは……自分自身がそうしてきたのでは?

そう言った時江の言葉を改めてに否定して冴子を信じ、誠意を尽くした。

「くそっ、 ばか野郎!」

二人の未来を思い描いてきた彼は、自分を罵った。今にして思えば全てに納得がいく。
幼い頃に母親に去られたという話は、彼女の傷として確かにあるだろう。だが、それにしても、彼女には踏み込めない高い壁があった。

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