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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
時江が座る気配がする、冴子はその動きに合わせてゆっくりと正座し、三つ指をついた。

「旦那様、よろしくお願いいたします」
「お家元です」

時江がすかさず釘を差した。

「ふふっ、まぁいい。近々家元ではなくなるからね、君にそう呼ばれるのも悪くはないよ」




服に着替えて髪を結び直し、着物の畳み方を教わって外に出ると、日は西に傾きかけていた。仕事に間に合わないのはわかっていたが、冴子は急がなかった。
これは現実なのかと、竹垣に掛かった看板で確認する。路地に目を向けると、楽に三台は入る駐車場に、黒い高級車が一台止まっていた。

(旦那様の車……)

冴子はふっと笑った。この家の門をくぐったら、人生が変わった。背中を丸めて生きてきた生活に、明るい兆しが見えてきた。お金持ちの気まぐれかもしれない。たとえそうでも、これまでの鬱屈した暮らしから抜け出せる。抜け出してみせる。

ふと目に留まったあの花、華やかな会場の隅に置かれた赤い椿は、冴子の孤独を映しているようだった。
お前も落ちろ、早く落ちろと、罪のない花に呪いをかけた女は、どこかへ消え失せていた。

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