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我が運命は君の手にあり
第14章 第十四章
小山は頷き「まかせてください」と頼もしい顔を向けた。
横になった老人の身体を手際よく起こし、子供を宥めるように背中を擦る。冴子は、痩せて小さくなった祖母の姿に胸が痛み、立ち上がって外を眺めた。

もうすぐ日が暮れる。冬の日は短く、澄んだ遠い空に星が瞬いている。ロータリーの噴水に目を落とすと、間もなく黒い高級車が入ってきた。冴子は息をつめ、胸に手をあてた。
ここを訪ねる度にその影は現れる。そして魅惑の闇へと誘い掛けてくる。捨てられるものは全て処分し、凌辱の写真を焼き捨てても、彼らに会う前の自分に戻る事はできなかった。
孤独の中、激しく燃え盛る己の身体をもて余す時、決まってあの言葉が聞こえてくる。

「二度と俺に近づくな! け、けだものっ! 」

怒りと蔑みを露にした遼の顔が、冴子を冷やす。後悔はなかった。これまでの人生で、一番正しい道を選んだといえる。遼が叫んだ言葉は、何より自分に相応しい言葉だった。熱は冷め、涙が溢れる。あの頃を懐かしむ余裕はなかった。遼を奈落に突き落とした自分を、許す事は到底できない。


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