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我が運命は君の手にあり
第14章 第十四章
「あははっ、いえいえ、そうじゃないんですけど、張りつめた感じはしてましたね」

「……知らなかった」

「もちろん、どちらの秋津さんもも素敵ですよ」

小山との会話の後、冴子は信子の寝顔に挨拶して部屋を出た。外の寒さに肩をすくめ、通りを渡って停留所に立つ。間もなく到着したバスに乗ると、時間を確認して目を閉じた。

電車と新幹線を乗り継いで三時間半。冴子は待ち伏せている過去に会いに来た。二年足らずの間に我が身に起きた出来事、その風景、匂い、喜び、痛み。心に刻まれた記憶から抜け出せない。
まだ私はここにいる。
遼を思う度、胸が締め付けられる。己の醜さに胸をかきむしり、染井剛介と出会った運命を呪った。

――旦那様と出会わなければ……。あの人が私を変えた。違う、私自身が選んだ。そして最愛の人を傷付け、逃げた。

過去に戻って来る度、身勝手で卑怯な自分を背負って帰った。


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