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我が運命は君の手にあり
第14章 第十四章
スーツケースひとつで窯元を訪ねた時、冴子は五十半ばの女性に迎えられた。作業ズボンとTシャツ。化粧っけもなく、髪を無造作に束ねた華奢な女性だった。笑うと守沢直美と似た柔和な表情になり、それが冴子の緊張をほどいた。
「うちの二階が空いてるから、そこに荷物を置いきて。ほら、あの家。左側のドアを開けたらすぐ階段があるの、そこを上がった所があなたの住まい。狭いけど、台所とユニットバスがついてるし、家電製品もそろってるわ。前に住んでた弟子が、独立して出て行く時に全部置いてったの」
そして続けざま、「田沢三枝子よ。三枝子さんでいいわ、よろしく」と言い、軍手を外して握手を求めた。
同じ陶芸家だった夫の故郷に、東京から嫁いで腰を落ち着けた三枝子。その夫から染井剛介は恩人だと知らされてはいたが、面識はなかった。二年前に夫を病で亡くした際、遠くから駆けつけてくれた染井に恩義を感じていた三枝子は、突然依頼された冴子の弟子入りを快く受け入れた。
「うちの二階が空いてるから、そこに荷物を置いきて。ほら、あの家。左側のドアを開けたらすぐ階段があるの、そこを上がった所があなたの住まい。狭いけど、台所とユニットバスがついてるし、家電製品もそろってるわ。前に住んでた弟子が、独立して出て行く時に全部置いてったの」
そして続けざま、「田沢三枝子よ。三枝子さんでいいわ、よろしく」と言い、軍手を外して握手を求めた。
同じ陶芸家だった夫の故郷に、東京から嫁いで腰を落ち着けた三枝子。その夫から染井剛介は恩人だと知らされてはいたが、面識はなかった。二年前に夫を病で亡くした際、遠くから駆けつけてくれた染井に恩義を感じていた三枝子は、突然依頼された冴子の弟子入りを快く受け入れた。