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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
昨日受け取った名刺の名を思い出した。染井遼。優しげだった昨日とは違う険しい顔つきだった。黙り込み、ハンドルを握ったまま前方を睨みつけている。

「昨日、連絡する必要はないと言いましたよね」
「でも、そういうわけには……」

彼が小さくため息をついた。

「……気を付けて」
「え?」
「彼には気を付けた方がいい」

「はぁ」と言う冴子の顔を見ずに車は走り去った。

(なに今の、自分の父親を彼だなんて)

鼻白んだ冴子はバッグを胸の前で抱き締めた。夕間暮れの冷気が肩に降りてくる。急に身体から熱が逃げていった。

――彼には気を付けた方がいい

染井剛介。抜け目のない視線と圧迫感。後退るばかりだった自分。冴子は本能的に嗅ぎ取った男の毒を改めて意識した。

カチッ……

花鋏が鳴った。

「……これは君」

カチッ……

声と鋏の音が対になり、赤い椿を何度も落とす。

「たった今この手で切り落としてしまったがね」

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