この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
昨日受け取った名刺の名を思い出した。染井遼。優しげだった昨日とは違う険しい顔つきだった。黙り込み、ハンドルを握ったまま前方を睨みつけている。
「昨日、連絡する必要はないと言いましたよね」
「でも、そういうわけには……」
彼が小さくため息をついた。
「……気を付けて」
「え?」
「彼には気を付けた方がいい」
「はぁ」と言う冴子の顔を見ずに車は走り去った。
(なに今の、自分の父親を彼だなんて)
鼻白んだ冴子はバッグを胸の前で抱き締めた。夕間暮れの冷気が肩に降りてくる。急に身体から熱が逃げていった。
――彼には気を付けた方がいい
染井剛介。抜け目のない視線と圧迫感。後退るばかりだった自分。冴子は本能的に嗅ぎ取った男の毒を改めて意識した。
カチッ……
花鋏が鳴った。
「……これは君」
カチッ……
声と鋏の音が対になり、赤い椿を何度も落とす。
「たった今この手で切り落としてしまったがね」
「昨日、連絡する必要はないと言いましたよね」
「でも、そういうわけには……」
彼が小さくため息をついた。
「……気を付けて」
「え?」
「彼には気を付けた方がいい」
「はぁ」と言う冴子の顔を見ずに車は走り去った。
(なに今の、自分の父親を彼だなんて)
鼻白んだ冴子はバッグを胸の前で抱き締めた。夕間暮れの冷気が肩に降りてくる。急に身体から熱が逃げていった。
――彼には気を付けた方がいい
染井剛介。抜け目のない視線と圧迫感。後退るばかりだった自分。冴子は本能的に嗅ぎ取った男の毒を改めて意識した。
カチッ……
花鋏が鳴った。
「……これは君」
カチッ……
声と鋏の音が対になり、赤い椿を何度も落とす。
「たった今この手で切り落としてしまったがね」