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我が運命は君の手にあり
第3章 第三章
その懐かしむような表情が清々しい。

「新人教育よろしくお願いします。それから、ここを辞めてもたまには顔を出してくれると嬉しいよ、お幸せに」
「ありがとうございます。いろいろお世話になりました。思い出がたくさんあって後ろ髪を引かれる思いです。あ、ふふっ、このご挨拶は最後の日にとっておかなくちゃ」
「ははっ、そうだよ。もうひと仕事してもらわないとね」
「はい」

彼女の言うたくさんの思い出には、あの夜の事も含まれているだろうか……

三つ年上の北沢は、各教室への情報発信や名簿整理、その他の雑務をこなす傍ら、花展の際には着物姿で受け付けに立つ。けっして出しゃばらず、関係者や来訪者に見せる細やかな気遣いには定評があった。取り立てて美人ではないが、すらりとした体型は人目を引き、おっとりとした雰囲気は、時に気品さえ感じさせた。
遼は未だ、彼女とあの夜の女が同じ人間だとは思えなかった。女というものは裏と表の両方を容易く生き分け、なに食わぬ顔をして隣で頬笑む。それは驚きであり、また刺激的だった。

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