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我が運命は君の手にあり
第3章 第三章
「私をとても愛してくれているの」
同僚にのろける彼女に怒りを覚えた。彼女を愛してはいなかった。にもかかわらず、相手の男を妬み、破局を願った。彼は名も知らぬ女を毎晩のように抱きながら、北沢との情交を強く望んだ。だが、そんな恥知らずな己の行いを自覚するうち、彼は自分の中に、父と同じ業を垣間見た気がして愕然とした。
違う、あいつとは違う……
いつかは妻を持たなければならない。染井流を継ぐ者として、子をなさねばならない。それは当然の事だった。
教室を増やし、各地に支部を立ち上げて全国展開してゆく。父の功績よりも遥か上をゆく事。それが彼の描く未来であり、夢だった。
北沢真子に望んだのは共に歩く未来ではなかった。彼は一夜の夢であったことに安堵し、彼女の結婚を祝福した。
「あら、いらしたようです」
例によって中折れのハットを被った染井剛介が、新年の挨拶に集まってきたスタッフ一人ひとりに頷き相好を崩している。
彼はひとりではなかった。その背中に隠れるように、和服の女性が立っていた。
同僚にのろける彼女に怒りを覚えた。彼女を愛してはいなかった。にもかかわらず、相手の男を妬み、破局を願った。彼は名も知らぬ女を毎晩のように抱きながら、北沢との情交を強く望んだ。だが、そんな恥知らずな己の行いを自覚するうち、彼は自分の中に、父と同じ業を垣間見た気がして愕然とした。
違う、あいつとは違う……
いつかは妻を持たなければならない。染井流を継ぐ者として、子をなさねばならない。それは当然の事だった。
教室を増やし、各地に支部を立ち上げて全国展開してゆく。父の功績よりも遥か上をゆく事。それが彼の描く未来であり、夢だった。
北沢真子に望んだのは共に歩く未来ではなかった。彼は一夜の夢であったことに安堵し、彼女の結婚を祝福した。
「あら、いらしたようです」
例によって中折れのハットを被った染井剛介が、新年の挨拶に集まってきたスタッフ一人ひとりに頷き相好を崩している。
彼はひとりではなかった。その背中に隠れるように、和服の女性が立っていた。