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我が運命は君の手にあり
第3章 第三章
驚きとも感嘆ともとれるどよめきが立つ中「遼、こっちに」と声がして、目の前に道が開けた。
家元に背を押されて歩み出た女に皆が見入っている。普段から見慣れている筈の和装の女性を前に、あんぐりと口を開けている者さえいる。浅紫の地に白い花びらを散らせた小紋、生成り地の名古屋帯に利休色の帯締めと帯揚げ。それは目立ち過ぎず、受付に立つに相応しい自然な装いだった。
「彼が次期家元の染井遼、私の息子だ。これから忙しくなるだろうから、よろしく頼むよ」
「今日からお世話になります。秋津冴子と申します。よろしくお願いします」
落ち着いた声でそう言うと、冴子は両手を揃えてゆっくりと頭を下げた。
「……」
皆が遼の反応を興味深く見守っていた。古ぼけたジーンズ姿で展示会に現れ、花器を壊しておろおろするしょぼくれた女――
「遼、どうした」
家元の声に、彼は二度まばたきして息を吹き返した。
「あ、どうも、染井遼です。慣れるまでは大変でしょうけど……、あ……、そうだ、わからないことは彼女に何でも訊いてください。北沢さん、よろしく頼むよ」
家元に背を押されて歩み出た女に皆が見入っている。普段から見慣れている筈の和装の女性を前に、あんぐりと口を開けている者さえいる。浅紫の地に白い花びらを散らせた小紋、生成り地の名古屋帯に利休色の帯締めと帯揚げ。それは目立ち過ぎず、受付に立つに相応しい自然な装いだった。
「彼が次期家元の染井遼、私の息子だ。これから忙しくなるだろうから、よろしく頼むよ」
「今日からお世話になります。秋津冴子と申します。よろしくお願いします」
落ち着いた声でそう言うと、冴子は両手を揃えてゆっくりと頭を下げた。
「……」
皆が遼の反応を興味深く見守っていた。古ぼけたジーンズ姿で展示会に現れ、花器を壊しておろおろするしょぼくれた女――
「遼、どうした」
家元の声に、彼は二度まばたきして息を吹き返した。
「あ、どうも、染井遼です。慣れるまでは大変でしょうけど……、あ……、そうだ、わからないことは彼女に何でも訊いてください。北沢さん、よろしく頼むよ」