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我が運命は君の手にあり
第3章 第三章
気乗りしない顔でちらりと冴子を見た遼が「ふーん」と言って足を止めた。
「え、それだけですか?」
北沢が身を乗り出した。
「え、あぁ、何を言えばいいのかな。その、よく似合ってるよ、うん、あ、二人とも」
「まぁ、それはどうもありがとうございます。変な遼さん」
北沢が笑い出し、冴子は少しはにかんだ。決まりの悪そうな顔で会場を出た遼が一度振り返った。
北沢はパーテーションの奥を覗いていたが、冴子は遼と目が合った。すぐに背を向けた彼の背中が染井剛介と重なり、今しがた囁かれた言葉が蘇ってきた。
「仕立てが間に合って良かったよ、私の目に狂いはない。よく似合ってる、美しいよ冴子」
真実だけが最良のものだとは思っていなかった。正直に語って馬鹿を見たことがこれまで何度あったことか。時江からは着物数枚を受け取っていた事もあり、北沢への偽りに後ろめたさは感じていない。真っ正直を通せば、悪しき火種を撒く事になりかねないと冴子は知っていた。
「え、それだけですか?」
北沢が身を乗り出した。
「え、あぁ、何を言えばいいのかな。その、よく似合ってるよ、うん、あ、二人とも」
「まぁ、それはどうもありがとうございます。変な遼さん」
北沢が笑い出し、冴子は少しはにかんだ。決まりの悪そうな顔で会場を出た遼が一度振り返った。
北沢はパーテーションの奥を覗いていたが、冴子は遼と目が合った。すぐに背を向けた彼の背中が染井剛介と重なり、今しがた囁かれた言葉が蘇ってきた。
「仕立てが間に合って良かったよ、私の目に狂いはない。よく似合ってる、美しいよ冴子」
真実だけが最良のものだとは思っていなかった。正直に語って馬鹿を見たことがこれまで何度あったことか。時江からは着物数枚を受け取っていた事もあり、北沢への偽りに後ろめたさは感じていない。真っ正直を通せば、悪しき火種を撒く事になりかねないと冴子は知っていた。