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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
染井の後に続いて数寄屋門をくぐり、石畳を歩く。雨戸が閉められた屋敷は暗く、玄関の灯りが道しるべとなっていた。
「どうぞ、上がって」
いつも出迎えてくれる時江の姿はなく、冴子は草履を脱ぎながらその所在を尋ねた。
「急に友人の訃報の知らせが入ったらしくて、せめて通夜だけはと出掛けて行ったんだが。そろそろ戻るだろう」
「そうですか」
「うむ、まあ中で待つといい。今夜は冷えるな」
冷えきった家を暖めようと、染井は自らストーブを着けて回る。その様子がなぜか滑稽で、冴子は心内で微笑んだ。
彼女が通された部屋は、初めてこの家を訪ねた時と同じ和室だった。以来、冴子はこの部屋に幾度となく入り、雪見障子から見える景色に安らぎや親しみを感じるようになっていた。だが、夜の帳(とばり)はその安らぎを断り、密閉された空間は青白い照明で満たされている。
「どうぞ、上がって」
いつも出迎えてくれる時江の姿はなく、冴子は草履を脱ぎながらその所在を尋ねた。
「急に友人の訃報の知らせが入ったらしくて、せめて通夜だけはと出掛けて行ったんだが。そろそろ戻るだろう」
「そうですか」
「うむ、まあ中で待つといい。今夜は冷えるな」
冷えきった家を暖めようと、染井は自らストーブを着けて回る。その様子がなぜか滑稽で、冴子は心内で微笑んだ。
彼女が通された部屋は、初めてこの家を訪ねた時と同じ和室だった。以来、冴子はこの部屋に幾度となく入り、雪見障子から見える景色に安らぎや親しみを感じるようになっていた。だが、夜の帳(とばり)はその安らぎを断り、密閉された空間は青白い照明で満たされている。