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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
いつもと違う不思議さを楽しむ冴子の視線が、床の間に活けられた赤い花の上で止まった。
「……」
ここで椿を見るのは二度目だった。部屋に来る度に床の間の花が気になり、そこに椿がなければ一日の安心が得られた。あの花でなければほっとする。何故なのかは説明がつかない。気掛かりがすっかり解消されていた筈の今日、闇に隠された屋敷の奥に一輪、誰かを待っていたかのように寂しく咲いている。
冴子は道行きとバッグを手にしたまま、花と見つめ合っていた。
「どうした、突っ立ったままで」
はっと振り向くと、湯気の立ち昇る湯飲みを盆にのせた染井がいた。
「旦那様、お茶なら私が」
「たまには私の入れた茶でもいいだろう、嫌かね」
「いえ、そんなことは」
「この湯飲みは私が焼いたものでね、滅多に使わないんだが今日は特別だ」
厚みのある茶褐色の湯飲みが二つ。冴子は腰を下ろし、目の前に出されたそれを両手で包んだ。
「……」
ここで椿を見るのは二度目だった。部屋に来る度に床の間の花が気になり、そこに椿がなければ一日の安心が得られた。あの花でなければほっとする。何故なのかは説明がつかない。気掛かりがすっかり解消されていた筈の今日、闇に隠された屋敷の奥に一輪、誰かを待っていたかのように寂しく咲いている。
冴子は道行きとバッグを手にしたまま、花と見つめ合っていた。
「どうした、突っ立ったままで」
はっと振り向くと、湯気の立ち昇る湯飲みを盆にのせた染井がいた。
「旦那様、お茶なら私が」
「たまには私の入れた茶でもいいだろう、嫌かね」
「いえ、そんなことは」
「この湯飲みは私が焼いたものでね、滅多に使わないんだが今日は特別だ」
厚みのある茶褐色の湯飲みが二つ。冴子は腰を下ろし、目の前に出されたそれを両手で包んだ。