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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
ざらついた感触は手のひらに心地よく、温もりが指先から全身へ伝わってゆく。次第に心が落ち着き、口に含んだ緑茶の苦味は、喉を過ぎてから胸にじんわりと広がった。
「旨いだろう」
「はい、美味しいです、とても」
「うむ、それは割らないでくれよ」
嫌みとも冗談とも取れる言葉に、冴子は思わず湯飲みを置いた。
「あははは、冗談だよ。花器の件はなんとも思ってない」
彼女は時江を待った。染井の背後で見え隠れする花が気になり、気持ちが勝手に揺れ動いた。さらに耳の奥では、花鋏の音が鳴っている。
「ああそうだ、時江が選んだ着物が二階にあるから着てみなさい。それを渡すつもりなんだよ」
「えっ?」
時江がなぜ自分に……冴子は耳を疑った。
「一式揃えたそうだから着てみるといい、彼女が見たらきっと喜ぶだろう」
「時江さんが私に? ……どうして」
「私にもさっぱりわからんよ、珍しいこともあるもんだ。どうだい、一人できちんと着られるところを見せてあげたら。そろそろ帰ってくるだろうから」
込み上げるものがあった。一人で着付けた姿を時江に褒められたことは一度もなく、それを望んではいなかったが少し寂しくもあった。
「旨いだろう」
「はい、美味しいです、とても」
「うむ、それは割らないでくれよ」
嫌みとも冗談とも取れる言葉に、冴子は思わず湯飲みを置いた。
「あははは、冗談だよ。花器の件はなんとも思ってない」
彼女は時江を待った。染井の背後で見え隠れする花が気になり、気持ちが勝手に揺れ動いた。さらに耳の奥では、花鋏の音が鳴っている。
「ああそうだ、時江が選んだ着物が二階にあるから着てみなさい。それを渡すつもりなんだよ」
「えっ?」
時江がなぜ自分に……冴子は耳を疑った。
「一式揃えたそうだから着てみるといい、彼女が見たらきっと喜ぶだろう」
「時江さんが私に? ……どうして」
「私にもさっぱりわからんよ、珍しいこともあるもんだ。どうだい、一人できちんと着られるところを見せてあげたら。そろそろ帰ってくるだろうから」
込み上げるものがあった。一人で着付けた姿を時江に褒められたことは一度もなく、それを望んではいなかったが少し寂しくもあった。