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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
「今夜はとても幸せでした」
腕枕をせがんで微睡む北沢に、遼は居心地の悪さを感じていた。数分前の熱情が消え去り冷静に戻っているだけならまだしも、煩わしさが胸に渦巻いた。
「……そう」
「最後に大好きな人に抱かれて」
「ふっ、これから結婚する人が言う言葉じゃないよ」
「ごめんなさい、でも本当です」
どうでもよかった。思い出作りに利用されたのならそれはそれで悪くはない。
だがこの喪失感はなんだ……
夢にまで見たこの時に陶酔し、望みを叶えた先にあったのは、傷付いた純情とでも言うのか。
彼は秋津冴子を愛していた。花展の開催中、無意識に彼女の姿を追い、はっとして周囲を見渡した事は二度や三度ではなかった。それが恋だとは思わなかった。
出会いのせいかもしれない。父の作品に見入っていた女が気になった。忠告を聞かずに父と会った事への苛立ちもあった。だが、それがなぜ別の想いへと形を変えたのか。そもそもなぜ彼女に忠告などしたのか……
「幸運なんです私。お家元と出会えた事でそれまでの自堕落な人生が変わりました。本当に良くして頂いて」
腕枕をせがんで微睡む北沢に、遼は居心地の悪さを感じていた。数分前の熱情が消え去り冷静に戻っているだけならまだしも、煩わしさが胸に渦巻いた。
「……そう」
「最後に大好きな人に抱かれて」
「ふっ、これから結婚する人が言う言葉じゃないよ」
「ごめんなさい、でも本当です」
どうでもよかった。思い出作りに利用されたのならそれはそれで悪くはない。
だがこの喪失感はなんだ……
夢にまで見たこの時に陶酔し、望みを叶えた先にあったのは、傷付いた純情とでも言うのか。
彼は秋津冴子を愛していた。花展の開催中、無意識に彼女の姿を追い、はっとして周囲を見渡した事は二度や三度ではなかった。それが恋だとは思わなかった。
出会いのせいかもしれない。父の作品に見入っていた女が気になった。忠告を聞かずに父と会った事への苛立ちもあった。だが、それがなぜ別の想いへと形を変えたのか。そもそもなぜ彼女に忠告などしたのか……
「幸運なんです私。お家元と出会えた事でそれまでの自堕落な人生が変わりました。本当に良くして頂いて」