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我が運命は君の手にあり
第4章 第四章
「……たしかに。それでも私は今日が一番幸せです」

唇を重ねてくる女を冷めた心で抱き締めた。その唇は徐々に下腹部へと下降していった。
夫となる男を簡単に裏切り、別の男を貪っている。この女は貞操観念という言葉を知らないのか。

熱くなっていく身体に辟易しつつ、遼は疲労を言い訳にしてバスルームに向かった。
シャワーの勢いは弱く、泡立ちの悪いシャンプーで地肌を擦った。見上げた天井の隅にはカビがはびこり、バスタブにはひびが走っている。

(何をやっているんだ俺は)

壁に何かが当たる音と、女の喘ぎ声が聞こえる。

「好きな人には、素直に気持ちを伝えないと……」

後悔とはどういう事だ。

目の前に父と冴子の顔が浮かんだ。あの男ならあり得る話だった。そこに行き着く理由が多すぎた。年の差を気にするような人間ではない。ましてや、秋津冴子に真っ先に声を掛けたのは父ではないか。

「くそっ!」

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