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第1章 累（かさね）

すずねは、はつねとあやねを連れて再び家出をしたあと松山市内の知人の家を転々とする暮らしを送っていたようでありました。

その間、はつねとあやねは学校へ行くことができなくなってしまったのでありました。

それから２日後の１月21日の午後のことでありました。

ところ変わりまして、慶彦が勤務している職場にて…

スーツ姿の慶彦は、デスクワークに集中していましたが、その時に上司の男性がヘラヘラとした表情で『すまんけどちょっといいかな…』と慶彦に言いまして頼みごとをしていました。

「慶彦さん…すまんけど、少しの間だけ時間取れるかなァ…」
「なんでしょうか…やらなければならない仕事があるからあとにしてください!!」
「ああ、すぐ終わるから…５分だけ仕事止めてくれるかな…」
「ですから、私にどんなお話しがあるとおっしゃるのですか!!」

慶彦がものすごく怒った表情になっていたので、上司の男性は『すまん…この通り…』とニコニコ顔で両手を合わせて言うたあと、ものすごく言いにくい声で頼みごとを伝えていました。