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第1章 累（かさね）

「慶彦さん…慶彦さんはうちで働き始めて20年…だよね…」
「（気乗りしない声で）そうですけど…」
「慶彦さんは20年間うちの会社でがんばって働いていたからそろそろゴホウビを与えようかと思っているのだけどぉ…」
「（ますます気乗りしない声で）ゴホウビって？」

ますます気乗りしない声で言うている慶彦に対して、上司の男性はますます言いにくい声でこう言いました。

「慶彦さん…おうちを新築したばかりのところ…もうしわけないのだけど…３月いっぱいで雇用契約を一度打ち切ろうと思っているのだよ…」

上司の男性が慶彦にゴホウビを与えると遠回しに言うたあと解雇予告を突きつけてきたので、慶彦はひどく動揺してしまったのでありました。

「ことしの３月いっぱいで雇用契約解除って…私にやめいと言うてはるのですか!!」

慶彦が言うた言葉に対して、上司の男性はニコニコ顔で両手を合わせながら『すまん…この通りわかってくれ…』と言うたあと、慶彦にこう言いました。

「ああ、慶彦さん…ワシは仕事やめいとは言うていないのだよ…事業所を変えてほしいとお願いをしているのだよ…」
「事業所を変えてほしいと言うのはどういうわけなのですか!!」

慶彦の言葉に対して、上司の男性は４月１日から行く事業所を慶彦に伝えました。