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第1章 累（かさね）

職場の上司から事実上のリストラを通告されてしまった慶彦は、どの面下げて義久夫婦に説明すれば良いのか分からずにコンワクしていました。

職場の上司は、慶彦に対して『大阪府の工場へ行けば天国だぞ…』と言うてから都合のいいことばかりを言うていたのでありました。

親会社の工場へ移れば、今よりお給料がよくなるぞ…

すむところは心配いらん…従業員寮があるから心配するな…

冷暖房完備で完全個室…

そうじ洗濯は寮の世話人さんがぜーんぶしてくださるのだぞ…

３食のごはんも世話人さんが作ってくださるから料理なんかせんでもいいんだよ…

野球観戦やコンサート行きたかったらチケット手配してくれるのだよ…

ユニバーサルスタジオや海遊館などの関西の娯楽施設の入場料は従業員割引が適応されるのだぞ…

従業員旅行は、海外のラグジュアリーリゾートへ行く旅なんだよ…

アホらしい…

慶彦は、上司の男性は都合のいいことばかりを言うていると思っていたので、シラけていました。

しかし、どのみちにしても義久夫婦に話をしなければなりませんでしたので、仕事が終わったあと寄り道をせずにまっすぐに家に帰ることにしました。

その日の夜のことでありました。

慶彦は、義久夫婦に上司の男性から４月１日からは大阪府の工場へ行けと言われたことを伝えましたが、義久夫婦は『慶彦の職場の上司は頭がいかれているのではないのか…』と言うてから慶彦にほんとうなのかどうかをたずねてみました。