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第16章 〜早紀〜

ここで早紀について少し説明しておく。

早紀は叔父の娘で、郁美の2歳年上だ。

ポーっとした郁美とはタイプが違い、性格はややキツめなところがある。

何事にも意欲的で、とりあえず人より優っていないと気がすまない、負けず嫌いな性格だ。

人より優位に立ちたい願望が強いのか、手段を選ばない面もある。

早紀は、裕福な家庭に育ち、ピアノやバレエはもちろん、様々な英才教育を受けた、典型的なお嬢様で、様々な能力が高い。

見た目もはっきりとした顔立ちで、はっきり言って郁美より美人だ。

スタイルも均整がとれ、まさに才色兼備といったところ。

しかし、なにか郁美に一歩及ばないことが多いのだ。

郁美はポーっとしているが、習い事から学業成績など様々なことで早紀を上回る結果を出してしまっていた。

早紀はその郁美の天才的なところがかなり気に食わないらしい。

本人はそんな心のうちをあらわにはしないが、言葉の端々に郁美への対抗心が透けて見えるのだ。

親戚一同が集う席で、酒にでも酔えば、その口調から一層そんな心のうちをのぞかせることもあった。

それだけならば、まだかわいげもあるのだが、早紀には、自分より立場の強い者には、打って変わって媚びへつらう面がある。

自分の優位性をたもつためには、他人の力も惜しみなく使うといった腹黒い考え方なのだろうが、これがあからさまで、非常に私の鼻についた。

そんな性格がなんとなく人に伝わるのか、文句のない美貌と才能を持ちながら、未だ独身であった。