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郁美の真実 parallel story
第32章 〜早紀、小学6年生 迫る黒い霧〜
早紀が帰宅すると、父親が玄関先で待っていた。

「お帰り....ちゃんとお行儀よく出来たかい?」

「はい....パパ、あのね....」

「ああ、いいんだ、パパの質問にだけ答えないさい!」

「早紀....私の言いつけどおり、おじさんには『はい』とだけ言えただろうね....?」

「はい....パパ」

「そうか....それでいい....」

「おじさんとなにか約束をしただろう?必ず守らなければいけないよ....わかっているね....」

「はい....パパ....」

早紀は、父親もF専務のもとで受けた行為のことを承知していることを悟った。

そして、自分がなにか政治的な道具として利用されていることも....

誰からの助けがないことも....

早紀の父親はF専務に連絡を取った。

「娘がなにか粗相をしませんでしたでしょうか」

「いや、実に楽しかったよ....早紀ちゃんはとてもいい子にしてくれていた....これからも頼むよ」

その後も早紀は月に数度、遊びに行かせてもらうと称してF専務の別宅へ送り込まれた。

そして、夏休みに入ると、F専務との旅行の予定が組まれていた。

いつものように、早紀の家に運転手付きの黒い高級車が迎えに来る。

車は空港へ到着すると、F専務が待っていた。

「やあ、早紀ちゃん、楽しみにしていたよ....早紀ちゃんもだろう?」

「はい....パパ....」

「うんうん....パパも楽しみだったよ」

「さあ、飛行機で私の別荘に行こう」

「近くに海のある素晴らしいところだ」

「....はい」

早紀が搭乗させられた飛行機は、とある地方都市へ飛んだ。

空港に到着すると、また、運転手付きの黒い車が待機している。

車が1時間ほど走行すると、海辺の田舎町に到着した。


早紀が連れて行かれた先は、ヨットハーバーの近くにある小高い丘に建つFの別荘であった。
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