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郁美の真実 parallel story
第32章 〜早紀、小学6年生 迫る黒い霧〜
Fの別荘に到着すると、例によってFが出迎えに現れた。

以前、別の別荘に招き入れられたときと違うのは、そこにもうひとりの初老の男がいたということであった。

これまでのいきさつから、早紀は、これから自分になにが起こるのかを予感した。

「早紀ちゃん、今日はパパの友達も招待したんだ....よろしく頼むよ」

「やあ、早紀ちゃん、はじめまして、実物はもっとかわいいね」

F専務はこの初老の男を「頭取」と呼んでいた。

老人二人が物陰でヒソヒソと気味の悪い会話をしているのが聞こえる。

「F専務....あれはかなりの上玉だね」

「ええ、躾もなっておりますよ」

「とはいえ、大丈夫なんだろうね」

「あれはミナーヴァで繋がっておる部活の娘です、ご安心を」

「そうか、それなら安心だ」

「ミナーヴァに出入りする者の娘なら、そこそこの家柄のお嬢様ということだな」

「はい、その辺の品のない娘とは違います」

「たまらんね〜....私はそういう背景があるとそそられるのだよ」

「頭取の貴重なお時間をいただくのですから、私もそれなりのものをご用意した次第です」

「しかし、いずれはあの娘もミナーヴァの捧げになるのだろう?」

「かわいそうに....まあ、穢らわしい幾多の目に晒される前に、じっくりと堪能するとするか」

「はい、ところで頭取、例のご融資....よろしくお願いしますよ」

「任せておきなさい」

賢い早紀は、大方この男はF専務の取引先銀行のトップなのだろうとわかった。

ということは、F専務にとって大事な人物だ。

またもや自分が政治の道具にされようとしていることにうんざりするのだった。
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