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郁美の真実 parallel story
第33章 わずかな光
早紀が丘を下り、眼科に輝く海が広がるにつれて、ある思いが心に浮かんだ。

見たこともない綺麗な風景....

まだ世界には私が見たことのない風景がある....

悔しい....

このまま死んでしまえば楽にはなれる....でも....

そんな気持ちが湧き上がる一方で、またあの別荘に戻り、さらに父親の元に戻り過酷な生活をしなければならないことを考えると心が折れかけるのだった。

生きるべきか死ぬべきか....

全ては海辺で考えることにした。

早紀は丘を下りると、ヨットハーバーの桟橋を越え、さらに漁船が停泊した桟橋の迷路に入った。

行き止まりになると船に登り、さらに奥へと進む。

遠くに見える堤防の先にある白い灯台を目指していた。

破れた金網の隙間を通り、やがて灯台へと辿り着いた。

灯台は遠くから見るよりずっと大きく、初めて灯台の実物を見た早紀は、少し嬉しかった。

だが....やがて外海からのうねりを受けて波立つ海面を見つめ、肩を落とした。

海は青く、晴天ではあるが、風が強く波も高い。

この綺麗な海なら....

美しい空や海を見て、生きることも選択肢として用意した早紀だったが、やはりFの別荘に戻ることはできないと思った。

早紀は堤防から海へ身を投げるモーションに入った。

その刹那、

「おねえちゃん!そこはいかんバイ!」

かわいらしく慌てた声が早紀を制止した。
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