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郁美の真実 parallel story
第33章 わずかな光
男の子が早紀に釣竿を手渡すと、しばらくして早紀の手に振動が伝わった。

そして、竿先もくいくいと曲がる。

「えっ?!なになに?!」

「おねえちゃん、それ、もう魚が食っとうバイ」

「え!そうなの?どうしたらいい?!」

「ゆっくりリールを巻いたらいいよ」

「え?!これね!」

「そうそう、もうちょっと速くていいよ」

やがて釣り糸の先端が近づいてくると、何匹か魚がついているのがわかった。

さらに早紀がリールを巻くと、糸の先には奇妙なウネウネ動く黒い魚が2匹、白く細長い魚が2匹ついていた。

「わ〜おねえちゃんすげえ!舌平目とカレイもついとう!」

「え?!え?!どうしたらいい?!」

「待ってて!」

そう言うと男の子は仕掛けの先に付いた魚を1匹ずつ外してクーラーバッグに入れた。

「おねえちゃんはスゴイね!舌平目はめったにこんバイ」

「なんかいいお魚なの?」

「うん!母ちゃん喜ぶバ〜イ」

「よかったね」

「うん!」

「また釣ってみる?」

「うん!」

早紀は初めて経験する魚釣りがとても楽しかった。

しばらく男の子と釣りを楽しんだのだったが、真夏の昼の陽射しは強烈で、コンクリートの照り返しもあり、早紀と男の子は汗びっしょりになった。

「ふい〜、あち〜、もうそろそろ釣りも限界やね」

「....」

早紀はふとさびしくなった。

「おねえちゃんは帰らんと?」

「....うん....まだ....帰りたくないの」
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