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郁美の真実 parallel story
第33章 わずかな光
早紀と男の子はひとしきり飛び込んだり泳いだりして遊ぶと、少々疲れて堤防に上がった。

「あ〜ハラへった」

「疲れちゃった〜!」

「よし!」

男の子はとりあえずズボンをはくと、釣り道具を置いていた場所に走っていき、なにか袋を持って帰ってきた。

とりあえず早紀もワンピースを着た。

「おねえちゃん、お菓子食う?」

「....うん、そういえば今日はなにも食べてなかった」

「え〜?!腹ペコやん!」

「うん!腹ペコ!」

「じゃあ、まずこれから!」

そう言うと、男の子は袋から10円で買える国民的な棒状のスナック菓子を2本取り出した。

早紀は駄菓子というものの存在は知っていたが、これまで口にしたことはなかった。

「ソース味とタコ焼き味があります!どっちがいい?」

「....」

「タコ焼きってソース味じゃないの?」

「え?....そういえばそうだな....」

「どう違うの?」

「え〜と....タコ焼き味は表面がガビガビしとって、口の中が痛くなるっちゃん」

「えぇ....じゃあ、ソース味....」

「はい!」

早紀は男の子からスナック菓子を受け取ると、袋を開けて口にした。

「あ!美味しい〜!!」

「おねえちゃん、コレ食ったことないんやね」

「うん!初めて食べたよ!美味しいね!」

「タコ焼き味もちょっとあげる」

「ほら、ちょっとガビガビしとうやろ?」

「あわてて食ったら口の中が痛いんよ」

「ははは、ちょっと硬くなってる、こういうのをガビガビって言うのね!」

その後も男の子は謎の粉末状のお菓子や、小さく仕切られた入れ物に入ったピンク色のゼリー状のお菓子などを取り出して、早紀に食べさせてくれた。

「初めて食べるものばっかりだわ!全部美味しい!」

「おねえちゃんは、ふだんはお菓子食わんと?」

「食べるんだけど....お母さんが焼いたクッキーとか、ケーキばっかりなの」

「へ〜!うちの母ちゃんは魚以外は焼かんバイ!」

「あははは」

「....」

「....」

「おねえちゃんは....なんで飛び込もうとしとったと?」

「....いやなことがいっぱいあったの....」
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