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郁美の真実 parallel story
第35章 早紀の嫉妬
旅館の居室に着くなり、寝そべって絡み合い、キスをした私と早紀だったが、この不倫旅行は夕方スタートだけにあまり時間がない。

名残り惜しいがキスを中断して切り出した。

「早紀さん、ご飯の時間あるから、先にお風呂行きましょ」

「....一緒に入る」

「ん〜....残念ながら混浴ではないんですよ」
(本当に残念だ)

「え〜」

「でも、せっかく温泉だから」

「お風呂入って、ご飯食べながらお酒飲みましょう」

「....そうね!行ってくる!」

残念ながら、風呂へはそれぞれ別に向かい、私は少し早めに上がって早紀を待った。

しばらく部屋で待つと早紀が部屋へ戻ってきた。

浴衣に着替え、すっぴんになった早紀が、少し恥ずかしそうに部屋の引戸から顔をのぞかせる。

すっかりすっぴんの早紀を明るい場所で見るのはこれが初めてだった。

早紀の顔はいつもより幼く見えたが、いつものキリっとした感じがない代わりに、柔和で可愛らしかった。

まじまじと早紀の顔を見過ぎたのか、早紀が怪訝そうな表情になる。

「なんですかー?わたしのすっぴんになにか文句でも?」

「....かわいい」

「え?」

「あ、化粧してなくてもかわいいな、と思ったんです」

「もう、バカにしてるでしょ!」

「してないですよ、さあ、食事しましょ!」

早紀が戻る少し前に部屋食の準備ができていた。

とりあえずビールで乾杯すると、早紀がおもむろに立ち上がり、私の膝の上に座ってきた。

「....早紀さん?」

「だっこしてて」

「食べにくいな....」

「だっこしたくない?」

「....したいです」

少々食事はしづらかったが、私は早紀を膝に抱いておくことにした。

時折「あ〜ん」とか言って食事を口に運ぶようせがむ早紀は、まあ、かわいくて、いやではなかった。
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