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郁美の真実 parallel story
第36章 Minerva
考えがまとまらないうちに、女の子に声をかけてしまったので、ここからどういう問いただしかたをしようかと悩んだ。

しかし、この子と毎朝電車で一緒になるようになったのは、少なくとも半年以上前だ。

この子がそんなに長期間私の動向を探っていたとも思えない。

とりあえず話をしないと何も明かにならない。

そう思って女の子に話しかけようとした瞬間、落ち着いた口調で初老のスーツ姿の男性が割って入ってきた。

「ああ、申し訳ございません」

「この場は私がご説明いたしますのでご容赦ください」

「この子は私どもが依頼して、アルバイトをしていたにすぎません」

「詳しい事情は知りませんので、この場は」

「アルバイト???....」

「さあ、すまなかったね、この場は私がお話するから、君はこの場を離れてください」

初老の男性が促すと、「ごめんなさい!」と言いながら、女の子は足早にその場を離れていった。

「申し訳ございません、私から説明させていただきます」

「あ、私は蒲生と申します『G』とお呼びください」

「訳あって、ここ数日あなたの身辺を調査させていただいておりました」

「理由は決してあなたに危害を加えるような目的ではございません」

「....」

「お時間をいただければ、ご説明させていただきます」

「本日お仕事終わりにでもお時間いただけないでしょうか」

「えっと、蒲生さん....でしたっけ....」

「Gでけっこうですよ」

「....G、今から説明をお願いできますか?」

「ちょっと、びっくりしてて....このままじゃ仕事も手につきそうにないんで、会社休みます」

「わかりました」

「それでは、お話するのに良い場所がございますので、ご案内します」

初老の男性がそう言うと、間髪を入れずに黒い高級車が私たちの傍に来て停まった。

「さあ、どうぞ」

私は、どこに連れて行かれるのか不安を感じはしたが、Gの礼儀正しい振る舞いに拒絶する気にはなれなかった。

とりあえず、会社へは病欠の連絡を入れ、Gの案内に従って車の後部座席に乗り込んだ。
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