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片想い
第1章 片想い
「ありがとうございます」

「あと、これは医者として旦那さまに言っておかなければいけないから言うけど、奥さまは安定期に入ったので、身体の状態が安定していれば、セックスをしても大丈夫ですが、感染症を避けるために、なるべくコンドームを装着するようにしてください。お腹や子宮に負担が掛からないように、深く入れ過ぎないように注意してください」

普通に医者に言われる分にはいいけど、涼子さんに言われるとなんだか恥ずかしい気がする。

「真ちゃん、いい?」

「わかりました」

僕は顔を熱くしながら答えた。

僕は涼子さんとラインのアドレスを交換すると、先に診察室を出た。少しして彩夏も出てくる。

僕たちは、会計を済ませると、仲良く並んで歩きながら、家路へついた。

「真司さん、どうだった?」

「うん、赤ちゃんと会えて、とってもよかったと思う。父親になるって気になってきた」

「そう、よかった」

そうは言っているものの、彩夏の顔がなんとなく優れない。きっと涼子さんのことを気にしてるんだろう。

「山崎先生、知り合いだったんだね」

案の定、言ってきた。

「ああ、さっきも言ったけど、幼馴染なんだ」

「隣同士だったって言ってたけど、いつか話してくれた初恋の人ってもしかしたら……」

「違うよ。僕の初恋の人は、涼子さんの家とは反対のほうの隣の人」

心配を掛けたくなかった僕は、つい嘘をついてしまった。

「そうなんだ。よかった」

彩夏の顔がパッと明るくなった。

「よかった? どうして?」

「あんなにきれいな人じゃ、私、勝てないから……」

「勝てないって……。そんなことないよ。彩夏は先生に負けないくらいきれいだし、かわいいよ」

「でも……」

「それに何て言ったって、僕にとって最高の女の子は彩夏なんだから」

「ほんと?」

「ほんとさ! 僕たちの赤ちゃんのためにも幸せな家庭をつくろうね」

「うん、ありがとう。真司さん、大好き!」

彩夏が腕を絡めてきた。僕たちは、そのまま腕を繋ぎながら、家へと帰った。
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