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片想い
第1章 片想い
身重の彩夏に変な心配を掛けたくなかった僕は、日曜日、「仕事に行く」と言って家を出て、涼子さんの病院へと向かった。
病院の玄関には、本日休診、という札が出ていたが、入院している人もいるので鍵は開いていた。受付で、山崎涼子先生をお願いします、というと程なく、涼子さんが奥から出てきた。今日は診療がないのだろう、白衣を着ていない。白いブラウスに黒のタイトスカートという格好だった。
「真ちゃん、ごめんね。病院に来てもらっちゃって」
涼子さんは、僕を院長室に案内してくれた。ホテルのスイートルームのような部屋で、手前の部屋に机と応接セットがあり、奥の部屋にベッドが置いてあった。
「いつでもここに泊まれるようになってるの」
お茶を入れながら、涼子さんが説明してくれた。
「それにしても、この間は本当に驚いたわ。いきなり目の前に真ちゃんが現れたんだもの」
「僕も驚きました。彩夏から美人の先生がいるとは聞いていたけど、まさかそれが涼子さんだったなんて」
「真ちゃん、大きくなったわね。お父さんになるんだから、当たり前か。今は何をしているの?」
「建築士をしています」
「そうなんだ。すごい」
「涼子さんのほうがすごいですよ。中学生のときからの夢を叶えてお医者さんになって、こんな立派な病院を持ってるなんて」
「ううん。ここは元々、主人のお父さんの病院だったの」
「ご主人もお医者さん?」
「違うわ。大学の先生をしてる。だから私がここを引き継いだのよ」
「そうなんですか」
それから僕たちは、ひとしきり身の上を語り合った。
病院の玄関には、本日休診、という札が出ていたが、入院している人もいるので鍵は開いていた。受付で、山崎涼子先生をお願いします、というと程なく、涼子さんが奥から出てきた。今日は診療がないのだろう、白衣を着ていない。白いブラウスに黒のタイトスカートという格好だった。
「真ちゃん、ごめんね。病院に来てもらっちゃって」
涼子さんは、僕を院長室に案内してくれた。ホテルのスイートルームのような部屋で、手前の部屋に机と応接セットがあり、奥の部屋にベッドが置いてあった。
「いつでもここに泊まれるようになってるの」
お茶を入れながら、涼子さんが説明してくれた。
「それにしても、この間は本当に驚いたわ。いきなり目の前に真ちゃんが現れたんだもの」
「僕も驚きました。彩夏から美人の先生がいるとは聞いていたけど、まさかそれが涼子さんだったなんて」
「真ちゃん、大きくなったわね。お父さんになるんだから、当たり前か。今は何をしているの?」
「建築士をしています」
「そうなんだ。すごい」
「涼子さんのほうがすごいですよ。中学生のときからの夢を叶えてお医者さんになって、こんな立派な病院を持ってるなんて」
「ううん。ここは元々、主人のお父さんの病院だったの」
「ご主人もお医者さん?」
「違うわ。大学の先生をしてる。だから私がここを引き継いだのよ」
「そうなんですか」
それから僕たちは、ひとしきり身の上を語り合った。