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君に熱視線゚
第53章 恋の修羅場ラバンバ!
頭に白い布巾を被ったシワくちゃな婆様は持っていた杖を振り、そこに座れと指図する。
苗達はお地蔵さんの隣にあった、とても低く平たい石に腰掛けた。
戦時中、アメリカ軍の攻撃が激しさを増す中。火傷や怪我に苦しむ兵隊達は飲み水を一番に欲しがった。
その水を汲みに行くことさえ困難な状況下で、唯一無事であった学校の庭の夏ミカンを兵隊さんの口に入れてやった女学院の娘が居たという……。
婆様は苗達にそれを語ると声を低く潜める。
「腐っててもいいからミカンに似た丸いもんをそこに置いとかんと……」
「……っ…」
「喉を渇らした兵隊さんが毎晩出て来るど……」
「……ひっ…」
「わかったか」
ずいっと寄って念を押す婆さんに、苗は泣きそうな顔で沢山頷いていた。
婆さんはあっちへ行けと杖を振る。
「イタズラはしちゃなんねえど。遊ぶなら学校の庭で遊べ」
苗と悟はそう追い払われて一目散に家路を走った。