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君に熱視線゚
第50章 番外編
「あの…オポンチ娘っ」
晴樹は携帯1つだけ握り締めるとマンションから駆け出した。
長い足が回転率を上げて動き出す。晴樹はマンションの直ぐ隣の木造二階建て、築32年の一軒家へ豪速球で向かった。
「すみませんっ!」
相変わらず立て付けの悪い引戸の玄関をガタガタと叩く。ここにはインターホンなんて洒落た呼鈴は見当たらない。家の者を呼ぶには夜だろうが外から叫ぶしかなかった。
「すみませんっ!俺ですっ…」
呼び掛ける声に少しばかりの焦りが窺える…
間を置いて引戸の磨りガラス越しに同じ背丈の小さな人影が三つ映っていた。
「兄ちゃんどうしたんだ?」
ガタガタと音を立てて開いた玄関から三つ子が声を揃えて尋ね返した。
「あの…めちゃめちゃ聞きにくいことなんだけどな…」
「………」
「苗…が、帰って来てたりしないか…」
気まずい表情で苦笑う。
「なんだ…新婚早々、痴話喧嘩か?」
「いや…ケンカではないんだけど…はは…」
はっきり言ってそれよりもタチが悪い。笑いながら自分自身が情けなく思えてきた。