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君に熱視線゚
第50章 番外編
まだ荷ほどきの終わりそうもない部屋を晴樹は見回す。
コイツが隣に越して来るなんて…
俺は聞いてない──!
分譲マンションの2LDK。造りは晴樹達の部屋と全く同じ。広めに作られた個々の間取りは今流行りのバリアフリーで段差も何もない。
生涯を快適に過ごせるように部屋の壁も自由に作れる可動式の間仕切りが備え付けられていた。
悟の一人暮らしは跡取りとしての自立の準備でもあるのだろう。
1つの部屋には書斎らしい家具が先に運び込まれている。
「苗…帰るぞ…」
晴樹は静かに言った。
蹲り、固まったままの苗の腕を掴んで引っ張り起こし玄関へ向かう。そんな晴樹の背中に悟は穏やかな声を掛けた。
「結城さん、明日改めて引っ越しの挨拶に行きます」
振り返った晴樹に悟はベットに腰を降ろしたまま笑顔を向けた。
晴樹は無表情の視線を返す。
相変わらず嫌みな笑顔だな…
そんなことを思いつつ、晴樹は黙って背を向けた。
チラリと横目で振り返った苗に小さく手を振ると悟は笑顔を崩さず晴樹と苗の後ろ姿をベットから見送った。
段ボールを支えにして開け放たれた玄関には三つ子が脱ぎ散らかした靴が散乱している。
「姉ちゃん!オレら悟兄ちゃんの手伝いして帰るから!」
三つ子はテレビの隅に置かれたゲーム器機に目を付けていた…