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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜
「ちょ…さ、悟ちゃ…」
「なに」
「あ、洗い物しにくいからちょ…っ…」
「ああ、そうだね」
見るからにドギマギしている苗の横顔を覗き、悟は苗から離れた。
「じゃあ、先に戻る……」
「う、うん…っ…だね!だね!そだね!」
」
「うん」
緊張した口調の苗を悟は笑う。そして不意に腰を屈め、苗の耳に口を寄せた。
「苗の傍に居たいからいっぱい勉強する…」
「………」
悟はとても小さく囁いた。
それこそ苗の耳たぶに唇が擦れる程の距離で、悟の声は吐息とともに苗の頬に掛かる。
「じゃあね…」
「う…うん…っ」
赤くなった苗の耳を見つめ、悟の口角がゆっくりと上がる。
まだまだこれから──
ただの幼馴染みだとしか考えていなかった苗に教えてあげる……
苗は俺のずっと特別な存在だったってことを少しずつ……
苗の心に刻んであげるから……
悟は硬直したままの苗の頭を撫でて静かに背を向けた。
床を軋ませて歩く音が遠ざかる。
家の奥に居たオカンに礼を言い、そして居間に居た皆にも声を掛け、悟は田中家の玄関を出ていく。
「どぁぁあっ…な、なんかつ、疲れがっ…」
苗は思わずその場にヘタリ込んだ。
高校生になって、すっかり妖しくなってしまった悟と、帰国して早速ハレンチ三昧の晴樹。そのダブルの攻撃に苗はゆっくりと頭を抱えていた…。