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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜
「ありがとう晴くん、重かったでしょ」
「はは、少し」
抱き方に慣れないせいか、腕に痺れがくる。
片付けとついでに風呂を済ませたオカンに晴樹はみのりを返すと腰を上げた。
濡れた手を拭きながら台所から出てきた苗と供に晴樹は田中家を後にする。
「みのりちゃん重いな」
少しどころかかなりズシッときた。
晴樹はみのりを抱っこした感想を苗に語った。
「生まれたてで三キロ超えてたから今はその倍だよ」
「七キロ近くか…」
「九キロ」
「それは“倍”とは言わねえ」
三倍じゃねえかっ…
晴樹は子供の成長の早さを改めて実感していた。
マンションまでの近い距離を苗と歩きながら、晴樹はふと夜空を見上げる。
四月の夜空は真冬の満天の星空と違い、少々寂しくもある。
でも今の晴樹に寂しいという感情は湧いてこない。
そうだ…
これから俺の隣には毎日、苗がいる──
愛しくて可愛くて…
面白い…
見てるだけで疲れを癒してくれる苗と毎日を過ごしていける。
晴樹は夜空から視線を苗に移すと苗の手をゆっくりと握った。
苗は優しく微笑む晴樹を見上げ、思いきり笑顔を返す。
「苗…」
「……?」
大きく笑った苗に晴樹の影が静かに重なった。
チュッと軽く音が鳴る。
重なった影が離れると、微笑む晴樹の表情が月光で微かに眩く見えた。