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卒業祝い
第3章 転
えっ!?

「身体が冷えちゃうよ。さ、入って」

軽く引っ張られただけだったが、ユキは、バスタブのふちに腰を寄せ、ぐっと力を入れて抵抗した。

「ちょっと、信司待って!」

思わず叫ぶ。

「信ちゃん。引っ張らないでっ!ちゃんといくから」

お風呂場に、慌てた声が反響する。

手の力は緩まったが、つかまえられたままで離されない。

ユキは、身体を捻らされ、横向きにならざるを得ない。

つかまれている左手を何とかバスタブのふちに置き、余った右腕で、両乳房を隠すように押さえる。

ほんのりと赤く染まった右の二の腕の下から、柔らかい胸のふくらみが覗いている。

ぎゅっと脇を締めているものだから、お餅のような乳房の肉が、ひしげて、はみだしてしまっているのだ。




信司が凝視できるのは、ユキの上半身だけなので、下半身を隠す必要はなかった。

バスタブのふちは、幸いにも比較的高く、股間のあたりに位置していたからだ。

ところが、ユキにとってはそれがもっと大きな不幸を招き寄せることになる。

もし、バスタブに浸かろうとすると、大きく足を跨いでゆかなくてはならない。

言葉では、思わず強く抗ったものの、実際には、信司にもっとぎゅっと腕を引っ張ってもらった方が良かったかもしれない。

そうすれば、あっという間にバスタブを跨いでしまって、信司にまじまじと見られることはなかったはず・・・

ユキは悔いを感じていた。

さきほどのタイミングは逸してしまったが、再び手を引っ張ってもらい、強引にバスタブの中に引きずりこまれるのがいいかもしれない・・・

と、思うのもつかの間、信司はユキの腕を離したのである。

そして、正面にユキを見据えながら、背中の側のバスタブに身体を寄りかからせた。

それは、とりもなおさず、ユキの一挙手一投足をこれからたっぷり眺めようとする姿勢に他ならない。

さらに、次の瞬間、ユキにとって悪魔のような一言を吐いた。

「ユキ、自分で入ってきてごらん」

そ、そんな・・・絶対ムリ・・

軽く絶望の淵にユキは立たされた。
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