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弥輿(みこし)
第3章 宗方宗家

◇◇◇

離れには村長さんでは無く、此処で働いている人なのかな? その人が説明付きで案内してくれた。

「今の季節はこの離れが一番綺麗なんですよ、離れ専用露天風呂もありますし、夕食前に景色を眺めてながら露天風呂なんて如何ですか?」
「ありがとうございます
気が向いたら露天風呂に入ってみますね」
「是非に……」

此処に来て見たのが男ばかりだったので、女の人と話すのは話しやすい。
それに案内して貰った離れは本宅とは別で、高級旅館並みの豪華さ、私だって流石に此には驚いたよ。

「言われた通り景色も綺麗……」

少ない荷物を部屋に置き、気になった窓に面している障子を開ければ、見事に手入れされた庭が見える。
紅葉に色付いた木々、丁寧に植えられた季節の花、少し遠くだけど川も流れていて此処から続く石畳を通って散歩出来る雰囲気。
久遠村に入った時に見た田舎という感じは受けない、都会的とは言わないけれど観光に来た旅行者、此処はそんな気分にさせてくれる。

「そう、露天風呂って言っていたし、ちょっとだけ入っちゃおうかな??」

開けた障子から離れ、広い和室を通り抜けた先に風呂への入り口がある。
少しだけ覗いて見れば、整った脱衣所にガラス張りの内風呂、その向こうには竹垣で囲まれた石積みの露天風呂、どれもホテル並みに広く豪華な作り。

全く興味がないと言えば嘘になるでしょう?
室内露天風呂付客室なんて、平凡なOLをやっていれば夢の世界、私だって一度はそんな豪華ホテルに泊まって見たいなんて夢はあった。

「……やっぱり入ろう」

離れなんだから多分誰も居ないし、ガラス張りでも大丈夫だよね?
それに着替えの浴衣も置いてあるし、此で入らないのは勿体無いでしょう!

幸い今日は暖かかったので、着ているのはセミロングのタイトスカートとカットソーに軽めの上着だけ。
髪は……上げたままで良いか、下ろすと背中より下まであって再度上げ直すのが面倒くさいもの。

全て脱ぎ捨ててタオルで体を隠し内風呂へ、ふんだんに流れるお湯を湯桶で掬い肩から掛ければ、まだ慣れていないお湯の熱さに体中がブルッと震えた。

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