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弥輿(みこし)
第6章 久遠神社・愛海
そう、隼さんは初めに言った「確める」と、そして内腿の付け根の痣を見付けられ、あの人は本気になった。
それはこの痣が弥の巫女の印の為、今もこうして弥の巫女に拘る。
そんなに大切なの! 弥の巫女がっ!!
「弥の巫女って何なんですか?
こんな……犯して拉致紛いな事をするほど、弥の巫女が必要な訳??」
「久遠村には弥の巫女が必要です、実際この30年の間、漁業としてはそれなりの収穫、弥の巫女が居られた頃は毎年豊漁が約束されていたと聞いています」
「聞いている?」
「俺は見た訳では無いので……
俺の産まれた年に弥の巫女は消えた、それからは巫女不在のまま30年という月日が経ってしまい、俺は先代の神主から話を聞いただけに過ぎません」
30年前、それは母の事。
じゃその前には居たんだ弥の巫女が、母は父と逃げたと隼さんは言っていたのだから。
じゃ……じゃ……母も弥の巫女としてあんな事をされていたの? それが嫌で父と逃げたの?
だって母が父と暮らしたのは5年という短い間、もし父が母の逃亡の手助けをしたという理由だったら説明が付く、そして2度と帰って来なかった事も。
「……弥の巫女が嫌だったから、久遠村の外の人間である父の話に乗った
だから母は頑なに久遠村を拒否していたんだ、父と離婚しても弥の巫女には戻りたくなかった、そこにこんな理由があったなんて……そして何も知らされていなかった私は、簡単に乗せられてしまったんだ……陸さんに……」
「すまなかった……そう佐伯さんは此処に来て言っていました
ですがこの村で宗方に刃向かう事は出来ない、佐伯さんも知って隠していたのなら宗方から制裁が下った、俺はそう思います」
「そんなに宗方が偉いの!?」
怠い体を無理に起こし、柊さん……だったよね、彼に向かって大声で叫んでしまった私。
納得出来ないじゃない、村1つ自由に出来るほど偉いなんて、此処は民主主義の日本なんだよ!!
「落ち着いて愛海さん、順を追って説明しますから
先ずは着替えと何か軽い物を食べた方が良いです」
「……………」
よく見れば私は薄い着物1枚、そして2日も眠っていたので体力はがた落ち、ついでにお腹も減っていて、とてもじゃないけど柊さんの話をマトモに聞ける状態じゃ無い事くらいは分かる。
だから仕方無くだけど、私は柊さんの言う通りにする事にした、勿論後でしっかり話を聞く為に。