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弥輿(みこし)
第6章 久遠神社・愛海



食事はお粥とは言わないけれど、本当に消化に良い軽めの物を出してくれた。
お腹が膨れれば動く元気も多少は湧く、次に薄布1枚の着物というか夜着から着替えなんだけど、柊さんが用意したのは女物の巫女服。
最低限の着物の着付けは知ってる、それこそ子供の頃に母から教わったから。
腰巻きから襦袢、そして長襦袢と身に付け此がインナー部分、更に白い小袖という上着部分に赤というか緋色の袴、普通に知られている巫女さんのそままの姿。

「此で良いですか?」
「着付け方は知っていらっしゃったのですね、では久遠村と久遠神社の歴史から始めましょう
此方へどうぞ愛海さん」

どうやら私が寝かされていた場所は社務所、つまり神主さんや巫女さん達の仕事場部分、この神社は居住空間も兼ねているらしい。
そこから出れば驚いた事に巨大な洞窟の中に出た、うんん社務所が洞窟の中に建てられていたのよ!

「驚きましたか?
此処は久遠神社の奥宮部分、表宮とは違い女人禁制で、あの大扉の向こうに豊漁と子孫繁栄を司る道祖神……此方的に言う金精大明神様が奉られています」
「道祖神??」
「古来からある原始神とも言います、水や風または岩……どんな物にも昔の人は神が宿ると考えた名残で、この御神体も神の一部と考えられ奉られた
扉の回りに絵が描かれていますよね、それが宗方と御神体様との出会いを書き残したと伝わっています」

柊さんの話によると……
遥か昔この場所は不毛の土地だった、それを開拓しようとやって来たのが宗方一族。
でも耕しても耕しても収穫は少なく、一族の長は神に祈った"この地に実りを"と。
そこに顕れたのが、今奉られている道祖神で"地は実らぬが海は実る"こう御告げを受け、その後宗方一族は漁業を主力とする一族となり、御告げの通り毎年溢れんばかりの豊漁に恵まれた。

「ただ神はこうも言ったそうです
"殺生をするのならば子孫繁栄に務めよ、さすれば地と一族の安泰は守られる、その印に一族の女を神に捧げよ、地の男に捧げよ、赤子の痣は神と人の契約の証、絶えれば海の実りは衰退するであろう"
30年、本当に漁獲量が上がらない久遠村、それは弥の巫女の不在を神が契約を破ったと取った為と言われています」
「ですから弥とは何?」
「弥とは、行き渡る・豊かなを意味します
豊穣豊漁を司り、村全てに行き渡らせる者、それが弥の巫女と呼ばれる由縁」

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