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弥輿(みこし)
第7章 優しく淫らな開発
◇
……不器用な人……
柊さんを見て聞いて、そう思ってしまう私。
世の中は広いのに、久遠村しか久遠神社しか知らない柊さん、だからこんな葛藤を起こしてしまう可哀想な人。
そして柊さんも私と同じ、神主だからと奉り上げられている、生活に必要な物は全て用意され、この久遠神社の囚われ人。
私と柊さんは同じ境遇、だから柊さんは私が居なくなるのは嫌なんだよね?
「柊……さん……」
此のまま行けば私が私でなくなるのが怖い、そう本音を漏らせば、柊さんは大丈夫という言葉をくれる。
『それを支えるのも俺の勤め、大丈夫です壊させません愛海さんを、俺が護りますから』
本当に?
快楽に溺れそうになったら、柊さんが私を助けてくれるの?
それを信じて良いんだよね私は、絶対に柊さんが護ってくれると……私は信じるよ。
ふと顔を上げた柊さんは悲しそうな瞳をし、一瞬互いの唇が触れ合う寸前まで近付いた。
だけどそれを柊さんが避けて、もう片方の肩口に顔を埋め唇が這う。
でも先程と違いキツく吸い付く事は無く、ただ唇が触れ舌が触れ動くだけ。
「……あっ……」
「護ります必ず……愛海さん」
「柊……さん……私……」
「何があっても俺が居ます
弥の巫女を……いや、愛海さんを護るのは俺の勤めです、触れられない俺の唯一の勤め、果たさせて下さい愛海さん」
「……はい……」
私を安心させるように抱き締めてくれる柊さん。
何も出来ない柊さんが、私に対して出来る精一杯の事だって、それが分かってしまったから。
だから私も柊さんに身を委ねる、私と柊さんは少し暗い部屋の中で、ただ静かに長い時間、お互いを抱き締め合っていた。