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弥輿(みこし)
第9章 豊漁祈願・弥の巫女
「では宵宮に期待しよう、弥の巫女として花咲く事をな」
「それはお任せ下さい
弥の巫女を護り育てるのが、俺の……柊家の勤めです」
「……そうか……」
隼さんは最後に素っ気ない態度で行ってしまった。
それでもまだドキドキしている私が居て、どうして良いのか分からなく、ずっと同じ場所に座ったまま。
「大丈夫ですか愛海さん?
宗方の方は、置く物を置けば帰ります」
「えっ? 大丈夫です
少しだけ言い分が嫌だっただけですから」
「嘘は言っていないのですよ隼様も、俺は慣れていますが、ただ隼様は言葉が直接過ぎるだけ」
「直接だから良いって訳じゃ……」
確かに柊さんが言う通り、隼さんは嘘は吐いていない、その逆で本当の事をはっきり言って行った。
でも回りくどい表現の世界に居た私には、その直接過ぎる言葉が辛い、当てられて心が反感を持つ程に。
後々まで引き摺る隼さんの言葉使いに、私の方が戸惑っていた。
◇
隼さん達が帰った後に、奉納された供物を見て回る。
一番始めに気になった神輿だけど、良く見れば何の変哲も無い普通の神輿だったのよね。
ほら神棚のように前に鏡とか置き、奥は扉が閉まっているというやつ。
次に見たのは神殿中央に奉納された物、神社は五穀豊穣だって柊さんが話をしていたけど、本当に穀物から野菜、肉に魚、そしてお酒と、お寺では考えられない奉納品。
「あ千代紙、こんな物もあるんだ、食べ物だけじゃ無く生活に関する物から、子供の遊び道具みたいな物まで、奉納品って奥深いわ」
「ひな飾りは知っていますか愛海さん?」
「ひな飾り、お雛様?
家に小さいのは飾ってあったかな?」
「ひな飾りは奉納品の縮図です、色んな物が飾られていた筈、嫁入り道具ともされていますが、流石に今は牛車とかはありません、こういうのは割と昔に習った奉納品なんですよ」
「へぇー、ひな飾りってそんな意味もあったんだね
そう柊さん、千代紙を何枚か貰ったらダメかな?」
「千代紙?
数枚くらい抜いても分かりませんよ愛海さん」
「本当!
じゃ数枚だけ……」
千代紙を見たら作りたくなった物があるの。
子供の頃、母が私に作ってくれた、お守りだって……
だから私も作って見たくなったのよ。