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弥輿(みこし)
第9章 豊漁祈願・弥の巫女

貰った千代紙を持って社務所に行き、目的の物に折ってゆく。
私が作りたいのは鶴、千羽鶴とはいかないけれど、子供の頃に私が泣くと、母はお守りだと言って何時も折ってくれた。

「……鶴……ですか?」
「そう、こうして折ってくれたの……母が……
そして必ずこうするのよ」

折り上がった鶴の羽を開き、両手に乗せて私はフゥーと息を吹き掛ける。
此が母がやっていたおまじないで、不思議な事に持っていると良い事があるの。

「はい、柊さんに……
こうするとね、ご利益があるんだって、そう母も言っていたし私も良い事が沢山あったと思う」
「鶴のご利益ですか……
ありがたく頂きます愛海さん」

まだ忙しい手を止めてまで、私を追って来てくれた柊さんに鶴を1つ。
絶対にご利益があるんだからね! と言っても此処は神社だった、此は失敗したかな??

「神社なのにご利益って変かな?」
「いえ、ご利益は神社だけとは限りません
どんな物にもご利益がある、此が道祖神の始まりとも言いますから、折り鶴でも良いと俺は思います」
「そう良かった」

私と母の数少ない思い出の鶴、柊さんは否定的ではなくて良かった。
私も不思議なんだけど、此の鶴を持っていると温かみを感じるの、母のように上手くいったかは分からない、でも何故か柊さんに渡したくなったのよ。

豊漁祭前のささやかな出来事、でも穏やかな雰囲気は此処までだったと思う。
隼さんに言われた通り、私は弥の巫女として女の性欲に溺れて行くんだから。



夜になり、奥宮の岩門を閉めた後、柊さんは朝に宣言した通り、私を連れ立って風呂へと向かう……私の陰毛を剃る為に。
昨日は裸だったけど、今日は湯着を用意してくれた。
とは言っても肌が透けて見える程の白の薄い湯着で、着方は長襦袢と同じでも胸とか透けて見えて、此って別の意味で恥ずかしいじゃない。

対して柊さんは男性用の湯着で白い腰巻き姿、上半身が裸なのがね、細い体つきと長く伸ばしている髪とが相まって綺麗なの。
繊細というか、優美とも言うのかな? 華奢というより艶やかさ、そんな雰囲気を柊さんは持っている。

「湯槽に腰掛けて脚を広げて下さい愛海さん」
「そ……そのっ!
自分でやりますから!!」
「それでは綺麗に剃れません、男達が見るのですから、1本も残らず剃るのが俺の勤めです」

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