この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
弥輿(みこし)
第10章 豊漁祭・秘中の儀式
「連れて来てくれてありがとう、凄く感動したわ」
「豊漁祈願で神輿が海に出ている間だけ俺も時間が空きますから、毎年こうして見ているのです
今年は愛海さんと見れて良かった」
という事は、柊さんは毎年1人で此処に来て見ていたの?
神主なんだから、多分祭の間は神社から離れられない、だから此の場所。
それって少し寂しいよ、次からは私も居る事になるんだろうし、毎年一緒に見よう?
「流石に神輿を海に投げ入れるのまでは見れません
遠いですね沖は……」
「そうね、遠いね
でも違う神輿が別の場所を歩いているみたい」
「あれは……奥宮の神輿です
慣習で白い山伏装束に天狗の面を被った年男と、宗方から選ばれた者が担ぎ、表の神輿の裏で此の奥宮に向けて練り歩きます」
確かに白い装束を着ている人が、神輿を担いでいるように見える。
表宮からみれば小さな神輿で、この間私が見た神輿だと思う。
だけど何となく異質な感じも受けるの、天狗のお面なんて神社とは合わないでしょう、それとも私の考えが違う??
「順調に奥宮へ向かっていますね、行きましょうか愛海さん此方も準備がありますから」
「……そう……」
もう少し見ていたいのに時間は待ってくれない。
柊さんは準備と言った、前の日に軽く説明して貰ったよ、先ずはみぞぎの為にあの風呂に入る事から始めると。
それから弥の巫女用の装束に着替えて、後は祭壇の前に座る……此が柊さんが教えてくれた全て。
その後の話は……無かった。
◇
あれから直ぐに階段を降りて、私は先ず風呂でみぞぎ。
普通に風呂に入る訳じゃないので、湯着を着て湯槽の中心で佇む。
半露天の風呂だけど、今日は境目の垣根を払い完全な露天風呂になってる、でも見えるのは洞窟の岩肌だけ。
「こうして見ると無機質
でも此処だけ温泉があるって……うんん、宗方宗家にも温泉があったわ」
社務所の奥の此の風呂は、洞窟内でも端の方で垣根を取ってしまえば、所謂洞窟風呂状態。
ライトは照されているけれど、何も無い洞窟の岩は寒々と感じるのよ。
離れの露天風呂だった宗方宗家とは偉い違いだわ此は。
「愚痴を言ってもね……誰も聞いてもいないのに、私が馬鹿みたいじゃないの」
流れるお湯を睨み付けても何かが出て来る訳でも無く、とにかく30分入っていろと言われたので、大人しく入りはしたよ? お陰で逆上せそうになったけどね。