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弥輿(みこし)
第10章 豊漁祭・秘中の儀式
襦袢というのは長襦袢とは違い、お尻が隠れるか隠れないか程度の丈しか無く、私の両脚は剥き出しのまま。
そこに申し訳程度の褌みたいのを付けられ、かろうじてお尻も陰部も隠れている。
でも前から見られるのだったら問題はないけど、横や下から見れば私は何1つ隠れていない訳で、こんな恥ずかしい格好で男達の前に出されると思えば、目的なんて1つしかないじゃない!
「襦袢まで透けてる」
「ちりめん……即ち綿を極薄で織った特注品になります、昔は裸体に千早(チハヤ)1枚でしたが、流石にそれはという声が上がり今の形式になったとは聞いてますね」
問題はそれではないのに、柊さんはまるで話を反らせているよう。
私が言いたいのは、襦袢が薄過ぎて胸も乳首さえも丸見えと言いたかったのに、そこは完全に無視のまま。
道具の中にあった姿見の前に立てば、如実に恥ずかしい格好の私が鏡に写る。
胸の形まで分かってしまう、着てるか着ていないかすら分からない襦袢。
生足を剥き出しにし、あの褌みたいのが陰部の前に垂れ下がっているのが、逆に卑猥さを醸し出していて、こんな私は私じゃないと思いたいのに、此を見ただけで体の何処かで熱さに火が点いた……そんな私は一体誰なの?
「此を……
千早は巫女の正式な装束で、儀式や巫女舞の時などに普通に着用します
それに折角の長い髪です、巫女らしく髪下で赤い紐で束ねましょう」
「……あっ……」
千早と呼ばれた羽織のような装束を着せられ、最後に柊さんは私の髪に触れて来た。
首筋に髪を束ねる為に触れる手に、私は思わず吐息が漏れてしまい、此だけなのに体は快感と捕らえてしまっている。
でも柊さんの手だって、わざとらしく首筋を撫でたように思えたの、それは私の気のせい??
「此で良いです、ですが最後に……」
「……………」
赤い紐で髪を束ねた後、柊さんは別の入れ物を持って来て、その蓋を開ける。
「……冠??」
「ええ、代々の弥の巫女が身に付けた品で、此の久遠神社で大切に保管されて来ました……また此の冠を身に付ける巫女が現れるのを待ち望んで」
「……………」
それは木で出来た古い冠。
所々に細かい彫りが入っていて、正面には何のモチーフなのか分からないけど、同じく木で出来た装飾が飾られている。
それを私の頭に乗せ満足そうに頷く柊さんを見て、ああと思う、私は贄なんだと。